「管理職教育・育成のエキスパート」

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     テーマ 141 担当部署を成功サイクルで回す
       

■「組織の成功循環モデル」とは

マサチューセッツ工科大学の
ダニエル・キム教授が提唱したものに

「組織の成功循環モデル」というものがあります。

組織が成果を獲得できない悪い循環(バッドサイクル)と
組織が成果を獲得できる良い循環(グッドサイクル)を
説明したものです。

バッドサイクル
1.結果の質 成果が得られない。
2.関係の質 押し付け合う。対立する。命令する。
3.思考の質 受身で聞くだけ。自分で考えない。
4.行動の質 自発的、積極的に行動しない。

バッドサイクルは、結果だけを求め、
「結果の質」を向上させようとすることから始めます。

いきなり結果を求めると対立が起き、
メンバー間で押しつけや命令が横行するようになり、
関係の質が低下します。

「関係の質」が悪化すると、仕事がつまらないと感じ、
受け身になってしまい、メンバーは考えることをやめ、
「思考の質」が低下します。

受け身なので、当然自発的・積極的に行動しなくなり、
「行動の質」が低下して成果が上がらなくなる、

つまり「結果の質」がさらに低下するという
悪循環になるということです。

グッドサイクル
1.関係の質 お互いに尊重し合う、信頼し合う。一緒に考える。
2.思考の質 主体的に自分で考える。
3.行動の質 自発的、積極的に行動する。
4.結果の質 成果が得られる

グッドサイクルは、「関係の質」を高めるところから始めます。

「関係の質」を高めるとは、相互理解を深め、
お互いを尊重し、信頼し合い、一緒に考えることです。

「関係の質」から始めると、
仕事は押し付けられたものではなくなり、

面白いと感じ、主体的に自分で考えるようになり
「思考の質」が向上します。

自分で考え、自発的、積極的に行動するようになり、
「行動の質」が向上します。

その結果として「結果の質」が向上し、
成果が得られ、信頼関係が高まり、
「関係の質」がさらに向上することになります。

■仕事に対する考え方やパーパス、価値観を部下と共有する

実務的には「組織の成功循環モデル」における
「関係の質」を向上するためには、

部下の方と仕事に対する考え方やパーパス、価値観を
共有することが重要となります。

「仕事は上司が部下に対して指示をするもので、
部下である自分は、指示された仕事だけを行えばよい」など、

入社して間もない社員から、
勤続10年以上のベテラン社員の中にも、

会社や仕事に対して、
勘違い、思い違いをしている方がいらっしゃいます。

部下の方が持つ、仕事に対する考え方やパーパス、価値観が
基本的に間違ったものであると、

上司の方が、一生懸命動機づけを行い、部下の方に、
自ら仕事の計画を立て自ら行動してもらおうと思っても、

部下は上司の意図を理解できないため、
部下の方の言動は、なかなか変化しません。

このような部下の状況を見て上司の方は、
「自分の部下はやる気がない」、「言われたことしかしない」
という評価になってしまいます。

また、モチベーションが上がらない部下の動機づけを行うために、
面談指導を何度も繰り返したり、評価制度を変更したり、

部下のためと思い仕事を無理強いさせたりと
部下のモチベーションを一層低下させる
結果になっている場合もよく見受けられます。

仕事に対して勘違いをしている部下の方に対しては、
部下の方の間違った自己流の考え方を正す必要があります。

管理職者として、部下に対して、
仕事に対する考え方やパーパス、価値観として話すべき内容は、

下記のような内容となります。

(1)会社は今がベストの状況。社長や管理職者、社員も
   現在最大限の知恵を出し、最大限の仕事をしている。
   このため、社員一人ひとりの成長、
   社員一人ひとりが行う新しい取り組みが会社を成長させる。

(2)会社の存在理由、使命はお客様をつくること。
   無から有をつくるのが会社の仕事。
   このための仕事の基本のあり方というのは、
   仕事は社員一人ひとりが考えて自らつくるもの、
   小さな改善の積み重ねがお客様をつくり、売上をつくる。

(3)仕事を通して、企業人として、社会人として、人は成長していく。

(4)仕事は、常に挑戦するもの。

管理職者は、上記のような企業人として、社会人としての
基本的な考え方、あり方を、常日頃、自分の言葉で、

部下に伝えると共に、
管理職者自身が実践している姿を見せることが重要です。

■目標ありきで仕事をスタートさせる

「こういうものをつくりたい」「こういう状況にしたい」
「こういうものを提供するとお客様が喜ぶ」

このような想い、ビジョンを目標として掲げ、
関係者に共感してもらい、協力してもらえる管理職者、
そして実現していく管理職者が今求められています。

新しい現実(新たなお客様、新たな売上・利益)を
生みだす管理職者が必要とされております。

そのためには、下記のような仕事の進め方が必要となります。

「必要な成果が獲得できると確信できるまで
 考え抜いた自らの意志による目標、行動計画の設定」
→「関係者への説明、説得」
→「迅速に着手し行動する」
→「トライアンドエラーを繰り返し期日までに目標を達成する」

組織の循環モデルで考えますと下記のように
グッドサイクルの「関係の質」の前に
「目標設定と周知」が必要となります。

「目標設定と周知」「仕事に対する考え方やパーパス、価値観の共有」
→「関係の質」→「思考の質」→「行動の質」→「結果の質」

仕事に対する考え方やパーパス、価値観の部下と共有に関しましては、
一度話しただけでは、なかなか伝わらない面もありますので、

いろいろな局面において、言い方も工夫をしながら伝えることが重要です。

自分の担当部署を良い仕事のサイクルで業務を回すことにより、
より優れたレベルの高い部署とすることができます。